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兄弟で矯正装置の使い回しはできますか?

  • いまはし歯科
  • 3月8日
  • 読了時間: 8分

長久手市蟹原の歯医者、いまはし歯科クリニックの院長 今橋健太郎です。


兄弟姉妹で矯正治療を始めるご家庭から、よくいただくご質問のひとつが「上の子が使っていた装置を、下の子にも使えますか?」というものです。「同じような歯並びに見えるし、もったいないから使い回せたら…」「装置を作るたびに費用がかかるので、できれば節約したい」というお気持ちは、とても自然なことですし、保護者の方の率直な疑問として、当院でも非常によく耳にします。

結論から申し上げると、兄弟姉妹間での装置の使い回しはできません。これは費用や手間の問題ではなく、衛生面・治療効果・安全性のすべての観点から、明確にお断りしている理由があります。矯正装置にはオーダーメイドで作られるものと既製品のものがありますが、どちらの場合であっても、使い回しは治療上・衛生上の問題から推奨できません。

この記事では、なぜ装置の使い回しができないのか、その理由を歯科医師の立場からわかりやすく丁寧に解説します。


目次

  1. 矯正装置にはオーダーメイドと既製品がある

  2. 歯の形・あごの大きさは兄弟でも全員違う

  3. 使い回しをすると治療効果はどうなる?

  4. 衛生面のリスクについて

  5. 装置が合わないことで起こりうるトラブル

  6. 兄弟で治療する場合の費用について

  7. まとめ ― 装置は一人ひとりのためのもの


1. 矯正装置にはオーダーメイドと既製品がある

矯正治療で使用する装置には、大きく分けて「オーダーメイドで製作されるもの」と「既製品(メーカーが規格サイズで製造したもの)」の2種類があります。この違いを正しく理解しておくことが、使い回しの問題を考える上でとても重要です。

オーダーメイドの装置は、お子さん一人ひとりのお口の中の型を採取した上で、専門の技工士が手作業で製作するものです。装置を作る際には、まず精密な型取りを行い、歯の大きさ・歯の間隔・あごの幅・歯列のアーチの形など、細かな情報をすべて反映した上で設計・製作されます。一見するとシンプルなプラスチックの装置に見えても、その形状の中には個人の口腔内データが細かく織り込まれており、まさにその一人のためだけに作られたものです。

一方、既製品の装置は、メーカーがあらかじめ複数のサイズ展開で量産しているものです。「既製品なら誰でも同じものが使えるのでは?」と思われるかもしれませんが、実際にはそう単純ではありません。既製品の装置にも複数のサイズや種類があり、お子さんのあごの大きさ・歯列の幅・かみ合わせの状態・治療の目的によって、使用する装置のサイズや種類が一人ひとり異なります。担当医が診察・検査の結果をもとに、そのお子さんに最も適した装置を選択しているため、「同じ既製品だから兄弟で使い回せる」とはならないのです。

つまり、オーダーメイドであっても既製品であっても、その装置はそのお子さんの口腔内の状態と治療計画に基づいて選ばれた・作られた「そのお子さん専用のもの」であることに変わりはありません。


2. 歯の形・あごの大きさは兄弟でも全員違う

「兄弟だから歯の形も似ているはず」と思われることがありますが、実際には兄弟姉妹であっても、歯の大きさ・形・生え方・あごの幅はそれぞれ異なります。顔立ちが似ていても、口腔内の細部の形状は別人と考えるのが正しい見方です。

例えば、同じ親から生まれた兄弟であっても、歯の本数・乳歯の抜け替わりのタイミング・永久歯の生え方の角度・上下のかみ合わせのズレ方は一人ひとり違います。また、矯正治療が必要になった原因や、どの歯をどの方向にどれだけ動かす必要があるかという「治療の設計」も、当然異なります。

既製品の装置であっても同様です。あごの幅がわずかに違うだけで適切なサイズは変わりますし、受け口・出っ歯・開咬など、どのような問題に対応するかによって使用する装置の種類そのものが変わることもあります。上の子と下の子で「同じように歯並びが気になる」という場合でも、問題の種類・程度・あごの発育の状態が異なれば、全く別の装置が選択されることは珍しくありません。矯正装置は、そのときのそのお子さんの口腔内の状態に合わせて選ばれるものだということを、ぜひご理解いただければと思います。


3. 使い回しをすると治療効果はどうなる?

仮に兄弟間で装置を使い回した場合、治療効果がまったく得られないだけでなく、むしろ歯並びを悪化させてしまうリスクがあります。

矯正装置は、歯に対して「適切な方向・適切な強さ」で力をかけることで、歯をじわじわと目的の位置へと動かしていくものです。この力の方向や強さは、装置の形状・サイズによって決まります。別の人のために設計・選択された装置では、力がかかる方向が異なるため、動かしたい歯とは別の歯に余計な力がかかったり、必要のない方向に歯が動いてしまったりする可能性があります。

また、成長期のお子さんの場合、あごや歯列は日々少しずつ変化しています。たとえ同じお子さんが以前に使っていた装置であっても、成長によって口の中の形が変わっているため、「以前作った・選んだ装置をそのままもう一度使う」ということも原則できません。矯正装置は、そのときの口腔内の状態に合わせて設計・選択されるものであり、時間が経過すれば同じお子さんに対しても最適な装置は変わることがあるのです。


4. 衛生面のリスクについて

治療効果の問題に加えて、衛生面のリスクも使い回しができない大きな理由のひとつです。

口腔内には、数百種類にも及ぶ細菌が常在しています。矯正装置は口の中に直接触れるものであるため、使用しているうちに細菌や唾液が装置の細部に浸透・付着します。見た目上は洗浄されているように見えても、家庭での洗浄だけでは完全に除菌することは非常に難しく、細菌や微生物が装置の素材に染み込んでいる可能性があります。

別のお子さんがその装置を使用した場合、相手の口腔内細菌が移ってしまうリスクがあります。これは、むし歯の原因菌や歯周病菌の感染経路になりうるものです。特に、むし歯の原因となるミュータンス菌は、唾液を介して感染することが知られており、兄弟間であっても装置の共有は感染リスクを高める行為となります。

家族だから大丈夫、と思われるかもしれませんが、口腔内の細菌叢(さいきんそう)はそれぞれ異なるため、衛生面においても装置の使い回しは推奨できません。これはオーダーメイドの装置に限らず、既製品の装置においても全く同じことが言えます。


5. 装置が合わないことで起こりうるトラブル

サイズや種類が合わない装置を無理に使用した場合、さまざまなトラブルが生じる可能性があります。

まず、装置が正しくフィットしないことによる口腔内のケガです。装置が歯列に合っていないと、歯茎や粘膜に当たって傷つけてしまったり、慢性的な痛みや口内炎の原因になったりすることがあります。特に成長期のお子さんの口腔粘膜はデリケートなため、合わない装置による刺激は見過ごせません。

次に、装置の脱落・破損リスクが高まります。ぴったりフィットしていない装置は、就寝中にずれたり外れたりしやすく、最悪の場合、誤飲につながる危険性もゼロではありません。特に小さなお子さんが使用している場合は、装置の脱落には十分な注意が必要です。

さらに、歯やあごへの悪影響も懸念されます。成長期のあごや歯列は非常に繊細で、わずかな力の方向の違いが将来の歯並びやかみ合わせに影響を与えることがあります。意図しない方向への力が長期間加わり続けることは、治療のやり直しや、新たな問題の発生につながることがあります。


6. 兄弟で治療する場合の費用について

「兄弟で矯正治療をすると費用が2倍かかってしまう…」というご心配をされる保護者の方も多くいらっしゃいます。装置の使い回しはできませんが、兄弟で治療される場合にご利用いただける料金のご相談については、お気軽に当院までお問い合わせください。

矯正治療は長期にわたるものだからこそ、費用の面でも無理なく続けていただけるよう、当院では丁寧にご説明・ご相談させていただいております。「上の子が治療中で、下の子も気になっている」「兄弟まとめて相談したい」という場合も、遠慮なくご来院ください。

また、矯正治療は早期に始めることで治療の選択肢が広がる場合もあります。気になるサインがあれば、まずは一度現状を確認するだけでも、将来の治療の方向性が整理されて安心感につながります。


7. まとめ ― 装置は一人ひとりのためのもの

兄弟姉妹間での矯正装置の使い回しができない理由を改めてまとめると、次の通りです。

  • 矯正装置にはオーダーメイドと既製品の2種類があるが、どちらであっても一人ひとりの口腔内の状態・治療目的に合わせて選ばれた「その子専用のもの」である。

  • 既製品であってもあごの大きさ・歯列の幅・治療する問題の種類によって使用するサイズや種類が異なるため、兄弟間での使い回しはできない。

  • 使い回しによって歯や顎に意図しない力がかかり、歯並びを悪化させるリスクがある。

  • 衛生面でも細菌感染のリスクがあり、家族間であっても装置の共有は推奨できない。

  • 合わない装置の使用は、口腔内のケガや装置の脱落・破損などのトラブルにもつながりかねない。

「もったいない」というお気持ちはよく理解できますが、矯正装置は一人ひとりのお口のためにつくられた・選ばれた大切な医療器具です。お子さんの歯並びと健康を守るためにも、装置は必ずそのお子さん専用のものをお使いいただくようお願いしております。ご不明な点や費用に関するご相談など、どんな小さなことでもお気軽に当院へお声がけください。お子さんの笑顔のために、スタッフ一同全力でサポートいたします。

いまはし歯科クリニックでは、お子さんの矯正治療に関するご相談を随時承っております。長久手市蟹原にお住まいの方はもちろん、周辺地域の方もお気軽にお問い合わせください。

 
 

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