乳歯のうちでも矯正は必要ですか?
- いまはし歯科
- 3月8日
- 読了時間: 5分
長久手市蟹原の歯医者、いまはし歯科クリニックの院長 今橋健太郎です。
保護者の方からよくいただく質問のひとつに、「まだ乳歯しかない(乳歯が多い)時期でも、矯正は必要ですか?」というものがあります。「どうせ永久歯に生え替わるのに、今やる意味はあるの?」「もう少し様子を見ていい?」と迷われるのは、とても自然なことです。
結論から言うと、乳歯の時期でも“矯正が必要になる子”はいます。ただし、これは「乳歯のうちから全員が矯正を始めるべき」という意味ではありません。大切なのは、いま矯正が必要か/経過観察でよいか/将来に備えて準備しておくべきかを、早めに整理しておくことです。
この記事では、乳歯の時期に矯正を考える意味と、始めどきの判断ポイントを、歯科医師の立場からわかりやすく解説します。
目次

乳歯の時期に「矯正が必要」と言われるのはどんなとき?
乳歯のうちに整えるメリット
逆に、急いで始めなくてもよいケース
乳歯の時期に見逃したくないサイン
よくある誤解:「永久歯に生え替われば自然に治る?」
家庭でできる、将来のためのケア
まとめ ― 乳歯の矯正は「必要な子に、必要なタイミングで」
1. 乳歯の時期に「矯正が必要」と言われるのはどんなとき?
乳歯のうちは、歯並びが多少ガタついていても「そのうち生え替わるから大丈夫」と思われがちです。しかし実際には、“歯そのもの”よりも、かみ合わせやあごの成長の方向に問題が出ている場合、早めの対応が役立つことがあります。
たとえば、次のような状態です。
下の前歯が上の前歯より前に出ている(受け口っぽい)
前歯がうまく噛み合わず、前で噛み切りにくい
左右で噛み方が違って、あごがずれて見える
口がいつも開いている、口呼吸が多い
指しゃぶりなどの癖が長く続いていて、歯並びに影響が出ている
この時期の矯正は「歯をきれいに並べる」というより、将来の並びやすさ・噛みやすさの土台を作るイメージに近いことが多いです。
2. 乳歯のうちに整えるメリット
2-1. あごの成長を味方にしやすい
乳歯の時期〜乳歯と永久歯が混ざる時期は、これからあごが成長していきます。そのため、問題の芽がはっきりしている場合には、成長の力を利用して、悪化を防ぐという考え方ができます。
2-2. 将来「歯が並ぶ場所」が足りなくなるのを防ぎやすい
永久歯は乳歯より大きいので、もともと場所が足りないタイプのお子さんでは、成長と生え替わりの流れの中で並ぶ場所が不足しやすくなります。早めに状況を把握し、必要があれば対策しておくことで、将来的に「場所が足りないから大きな工夫が必要」という状態を避けられる可能性が上がります。
2-3. 悪い癖(習慣)に早く気づける
歯並びの乱れは、癖が原因のことがあります。この時期に一度チェックしておくと、原因に早く気づけるので、結果として治療がシンプルになりやすいことがあります。
3. 逆に、急いで始めなくてもよいケース
乳歯の時期に相談に来られても、実は「今は治療を急がず、定期的に確認していきましょう」というケースも少なくありません。
たとえば、
歯並びのガタつきが軽く、今後の生え替わりで改善が見込める
かみ合わせの大きなズレがない
癖や生活習慣の影響が少ない
といった場合です。
ここで大切なのは、「何もしない」というより、「評価した上での経過観察」にすることです。定期的に確認していれば、必要になったタイミングを逃しにくくなります。
4. 乳歯の時期に見逃したくないサイン
「矯正が必要かもしれない」サインは、歯並びだけではありません。見た目がそれほど乱れていなくても、かみ合わせや癖の影響が強い場合があります。
チェックしておきたいポイントは次の通りです。
受け口っぽい(下の前歯が前に出る)
前歯で噛めない/噛み切りにくい
口が開きやすい、唇が閉じにくい
いびき・口呼吸が多い
指しゃぶり・爪かみ・舌の癖が長引いている
左右どちらかでしか噛まない
こうしたサインがある場合、歯並びの問題というより、成長やかみ合わせの方向性を確認する価値があります。
5. よくある誤解:「永久歯に生え替われば自然に治る?」
「永久歯に生え替われば自然に整いますか?」と聞かれることがありますが、答えはケースによります。
確かに、乳歯の時期に見える軽いガタつきの中には、生え替わりで落ち着くものもあります。しかし一方で、
もともと並ぶ場所が足りない
かみ合わせのズレが大きい
癖が続いている
といった条件があると、永久歯に変わることで「歯が大きくなる分、むしろ目立つ」こともあります。(前歯は、乳歯より永久歯の方が、1.4倍くらい大きい)
「生え替わりを待つ」という選択は、正しく使えば有効です。ただしそれは、”一度評価してから選ぶべき“戦略的な様子見”であって、完全な放置とは別物だと考えてください。
6. 家庭でできる、将来のためのケア
乳歯の時期は、家庭でできることも意外と多いです。矯正が必要かどうかに関わらず、次のポイントは将来の歯並びにもプラスに働きます。
鼻づまりを放置しない(口呼吸が続くと、口元や歯並びに影響が出ることがあります)
よく噛んで食べる習慣(噛む回数が少ないと、あごの発達が弱くなりやすいと言われます)
姿勢(食事中の姿勢・スマホ姿勢)に気をつける
指しゃぶり等の癖が長引く場合は相談する
定期検診で“生え替わりの流れ”を確認する
矯正は「装置をつけること」だけがすべてではなく、環境や習慣を整えることも治療の一部だと考えるとわかりやすいと思います。
7. まとめ ― 乳歯の矯正は「必要な子に、必要なタイミングで」
乳歯のうちでも、矯正が必要になることはあります。ただし、乳歯の矯正は「全員が早く始めるべき」というものではなく、ポイントは次の3つです。
乳歯の時期は、将来の土台(成長・かみ合わせ・癖)を整えやすい
今すぐ治療が必要な子もいれば、評価した上で経過観察がベストな子もいる
“生え替われば治るか”は個人差が大きいので、早めに現状確認する価値がある
「必要なタイミングで、必要なことだけ」を選べるようにするために、気になるサインがあれば早めに一度ご相談ください。その時点で治療を始めるかどうかではなく、まずは状態を整理し、選択肢を増やしておくことが大切です。



